物語−STORY−

茹だるような夏の気配が、すぐそこまで迫っていた。

夏休みを目前にした女子高生たちは今か今かと、その日を待ちわびている。

「海、あたし海行きたいーい!」

「勉強会やろうよ」

「去年もそう言って、人に宿題押し付けてたじゃん」

「お盆は家族旅行に行くからお土産買ってくるね」

しかし、その安息が今は遠くに感じた。

「最高の夏休みを迎えるためにも、みんな生き残らないとね」

鼓膜を破りそうな重い静寂が漂い、誰もが手に持った凶器を握りしめる。

淡稲瀧高校3年6組。授業の退屈も、部活の賑わいも、放課後の剣呑もここにはない。

まるで黒い絵の具が塗りたくられたように、世界は暗い帳に包まれている。

変わり果てた同級生が徘徊する学び舎で、少女たちは生にしがみつく。

当たり前だった食料が、水が、生命が今は尊い。

誰も出られない。誰も助けに来ない。

「生きて帰ろう」という無言の誓いが虚しく木霊している。

手を取り合う仲間の温もりだけが、今を感じる唯一の手段だった。

震える足が向かう先は未来か、それとも…。

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